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5月中ごろから、私の立ち寄る店でもパン類が値上がりし始めた。
農林水産省の資料によると、4月から政府売渡価格は平成19年10月と比べて30%値上がりしている。それが最近まで末端の消費者価格に現れなかったのは、きっと企業が在庫を持っていたおかげなのだろう。その在庫も底を尽き、ついに値上げだ。パンという商品にとっての原材料である小麦が30%あがったのに大して、120円だったパンが130円になったので、その商品の値上げ率で見ると8.3%。どこまで価格に転嫁できているのかちょっと心配になる(私が心配しても仕方ないが)。というのは、値上がりしているのは、小麦だけではないからだ。原油価格の高騰は、ガソリン価格としてニュースになりやすいが、実は、全ての燃料を押し上げている。それは、全ての輸送コストの上昇と、パンを焼くコストの上昇ももたらすわけで、それら全てを商品価格に転嫁できないと、パン屋の経営を圧迫する。
でも、短期的に経済の停滞をもたらす原油や穀物相場の上昇は、長い目で見れば、日本のためになることかもしれない。
原油の上昇は、代替エネルギーへの転換を後押しする。これは実に大切なことだと思う。原油は産出する場所が限定されており、地政学的リスクを伴う。要するに治安が悪い場所が多い。また採掘可能なものに限れば、あと何年もつのか(いろいろな説があるが)怪しい。もうすぐ底を尽くことがはっきりしたときに、採掘権をめぐって戦争に発展する可能性が少なくないのではないか。そういうことを考えると、今のうちに代替エネルギーの開発にもっと軸足を移すための好機と考えるべきだ。
代替エネルギーといっても、一部で開発している穀物を原料とするのはダメ。食料の高騰で、暴動がおきている地域もあるというのに、火に油だ。
日本は、幸か不幸か、自然エネルギーには恵まれている。地熱、風力、太陽光などなど。さらに、地震や台風、竜巻の力も安全にうまく取り込めたら最高だ。地震の場合には、その予知技術も必要かもしれないが、それらの技術が開発できれば、巨大な自然エネルギーを災害という形でなく、エネルギー備蓄という形に変換でき、日本のみならず、天然資源に乏しい国や地域に提供できる。そうなれば、国際的な平和と安定にどれほど貢献できることか。
穀物価格の高騰も、長い目で見れば、日本にとってプラスにすることが可能だ。
輸入価格の上昇は、相対的に国内市場との価格差を小さくする方向に働く。コメ以外の作物の自給率を上げる絶好の機会ではないか。株式市場は、これらを全て先取りするような動きが見える。政府の予算配分も株式市場のように、時代を先取りしてくれるといいのだが。
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