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養老 孟司氏の「からだを読む」を読んだ。あとがきに、ご本人が人体全部を語るつもりだったが、忙しくて消化管だけになってしまったと書いている通り、内容は、口から直腸と肛門までの消化管の話だけなのだが、途中、いろいろと脇道にそれたりするし、独特の口調(「バカの壁」シリーズとは全然違う文体)もあって、結構、楽しめた。解剖学は歴史が古く(著者いわく、明治時代の権威主義の影響もあってか)やたらと難しい漢字もいくつか登場するが、適当にルビがふってあるので、読めないことはない。
時々、挿絵が入っているので、その部分の理解はしやすいのだが、挿絵がなくて、言葉だけで説明されている箇所は、(著者も弁解しているが)あまり理解できなかった。
各臓器や組織を単に網羅するのではなく、他の動物との比較や、発生学の視点から意味を考えながら話が進むので、大変興味深い。また病気との関連も語られ、自分の体をもう少しいたわろうにしようという気持ちになったのが最大の収穫かもしれない。
解剖学教室をちょっと覗いた気分になりたい方にはおすすめ。

解剖学の人にとって扱う死体はすべてヌードであって、そこに偏見(欲望や感情)が入り込むことはないという前提で書かれた本文最後の一文は痛快。
「私からすれば、現代人はほとんど性と金という狂気に冒されている」
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