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録画しておいた『知るを楽しむ 私のこだわり人物伝「カラヤン 時代のトリックスター」』第一回を観た。カラヤンの指揮した演奏は「美音」を追求したものだとコメンテーターの天野祐吉氏は話されていたが、最近の演奏に耳が慣れた私はあまりそう思ったことはない。録音技術の進歩も演奏技術の進歩もあるのだろうが、カラヤン以降の指揮者の演奏の方が徹底的に整っており、美しい音が聞けるものがたくさんある。では、その分、より感動が深まったかというと、そうでないところが、音楽の面白さかもしれない。私が持っている数少ないカラヤンの演奏は、スタジオ録音であっても、(意図したか否かは別にして)精緻さを犠牲にしても迫力や推進力を感じる。
天野氏は、ライブ録音のザワザワした感じが嫌いでミスを編集で排除したスタジオ録音の方が絶対にいいと言っていたが、私にはそれも賛同できない。私にとって音楽に最も必要な要素は躍動感とか緊張感といったもの(高揚感といえるか?)だ。フランスの某指揮者のように完璧に設計された音響世界は確かに透明感抜群だし、スコアが見えるようで勉強にはなる。だが、それは勉強目的以外には繰り返し聞こうという気になれない。音響が完璧で、しかもテンポも安全に設定された幻想交響曲なんて、本来あるべき異様で生々しい感情の毒気が抜かれた、博物館の死蔵品にしか聞こえない。
話がそれたが、この番組の目玉はおそらく演奏ではなく映像だと思う。それまで私はカラヤン晩年の映像しか観たことがなかったが、その指揮ぶりは晩年のベームほどではないにしても、動きが小さくて観ていてつまらないものだった。しかし、この番組では、若かりし頃の映像がふんだんに流される。若い頃の指揮ぶりは動きもオーバーなくらい大きく、見る楽しささえ感じる。この指揮の様子からは美音とか精密さよりも推進力とか迫力が音楽に込められるのが納得がいった。
それまでの指揮者との比較という意味もあって、フルトヴェングラーやワルターの映像も出てくるので、見逃した方は、再放送(4月8日午前5:05~5:30)を見てみてはいかが?
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