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スカラムーシュという曲は、みにくいアヒルの子のようだ。

1937年、当時の著名な女流ピアニスト、マルセル・メイエとイダ・ジャンケレヴィッチが、2台のピアノ用の新曲をミヨーに対して委嘱した。
ミヨーはこの依頼に乗り気でなく、以前に作曲してあったモリエールの喜劇
「空飛ぶお医者さん」の劇伴音楽から、つぎはぎして提供したらしい。
つまりやっつけ仕事といえるだろう。そのせいかミヨーはこの曲を出版したがらなかった。
しかし、この曲が聴衆には大受けしてしまう。これには作曲者自身が驚いたようだ。
驚いただけでなく、ベニー・グッドマンのためにクラリネット独奏と
オーケストラのための曲に編曲して提供している。
この後ミヨーはグッドマンのために、新たにクラリネット協奏曲も作曲したのだが、
何が気に入らなかったのか、グッドマンは協奏曲の方は演奏せず、
スカラムーシュばかり演奏したという。
其の後、さらにアルトサックス独奏とオケ伴奏という編成も作られ、ミュールが初演している。
現在は、アルトサックス独奏とピアノ伴奏という編成(これも作曲者自身の編曲)
で演奏されることがおそらく最も多く、クラシック系サクソフォン奏者の重要な
レパートリーの1つになってしまった。
スカラムーシュは、ミヨーの全作品の中で、演奏頻度も録音頻度も最も高い曲
ではないだろうか。そして、ミヨーといったら、この曲しか知らないという人も
少なからずいそうな気がする。
このように作曲者自身の中での評価が低いのに聴衆の反応が熱狂的という例は、
サンサーンスの動物の謝肉祭や、ラベルの亡き王女のためのパヴァーヌなど
なぜかフランスの作曲家の作品に多いように感じるのは私だけだろうか。
いずれも、作曲の技巧に走らず、比較的シンプルにできているというのが
共通点のような気がする。

スカラムーシュの編成はいろいろあるが、私の個人的な好みでは、カラフルな
オケ伴奏も楽しいが、ちょっと変わったところで、森田一浩編曲による
クラリネット8重奏版がお勧め。サックス独奏よりもミヨー臭さ
(多調性っぽさ)が、強くにじみ出ていて面白い。ミヨーの他の楽曲に
共通する独特の体臭を感じ取ることができる編成だと思う。
ただし、この曲が幅広くウケた要因の1つが、ミヨー臭さが薄いところに
あったとしたら、私はハズしているのかもしれません。

参考CD
プーランク:2台のピアノための協奏曲他
オリジナルの2台のピアノによる演奏が収録されています。
ラベック姉妹による演奏はとてもかっこいい。

ベニー・グッドマンへのオマージュ  
エドアウト・ブルンナーのクラリネット独奏によるスカラムーシュの他、ミヨー、ヒンデミット、コープランドの協奏曲入り

東京クラリネットアンサンブル/華麗なるクラリネットアンサンブルの世界II
クラリネット8重奏版が聴けます。
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